アクシデントリポート

大変お待たせしましたが、ようやくレポートを発表します。

それで事故の原因とそのメカニズムについてもレポートに書けるかな?ってぐらいに詳しい人達に教えて頂き、理解が進んで来たのですが、まだまだ書ききれません。

とりあえず今回の事故に関係する事柄について事故レポートに付け加えます。

では。


1・気象状況

当日5月3日、室根山は朝から高気圧の縁を回る風により東南東の強風だったのですが、高気圧が東海上に遠ざかるにつれ影響が少なくなり、お昼頃にはフライトにはまったく問題が無いほど、風が落ちて来ました。

11時頃から僕は機体のセットアップを開始して準備をしていましたが、その横でパラグライダーがその頃から次々とテイクオフ。

その時点では、サーマルは余り無くみんなぶっ飛び条件。

で、僕が準備が終った12時頃には、それなりの腕のパイロットならサーマルでソアリング出来る条件になっていました。

その時点でのテイクオフでの風は南東の風2〜4m/sぐらい。

おそらく概ね終日雲低高度は海抜で1100mちょっとぐらい(TOは900m)

基本的にはかなり穏やかなサーマル条件でした。

その後、間もなく僕もテイクオフ。

僕も余り上がらず、テイクオフ+100mからテイクオフレベルの間を行ったり来たりって所でした。

当時自分の他には、三人ぐらいのパラフライヤーが山頂付近を飛んでました。

テイクオフして一時間程したあたりから、サーマル条件が幾分って言うかほんの少し良くなり、雲低まであと少しぐらいまで上がるようになってました。

サーマルの強さは0〜2m/s前後で、春の割には湿度が高いせいか強くなく、かなり穏やかか条件と思いました。


2・事故状況

で、その後テイクオフから東に200mぐらいかな?にある室根神社のさらに南東側300mぐらいの場所の上空テイクオフ+150mぐらいをセンタリング中に事故が起きました。

センタリングのバンク角は当初、概ね30度前後、速度はGPS読みで多分50kmぐらい。

その時点でバフェットや振動などの失速やフラットスピンの兆候などは感じられず。

それで、サーマルのコアを感じてセンタリングの中心を移動しようと、押し出し(ピッチアップ)した途端にぐるんと横転。

丁度スプリットSをする感じでハーフクイックロールをして背面になった後、スパイラルダイブ

最初は60度ぐらいの降下角(但し若しかしたら機体の下を向く角度が60度であって、実際の降下角はもっと深かった可能性あり)でスパイラル降下していました。

それで以前ATOSで何回かフラットスピンに完全に入ってその後のスパイラルダイブからの回復で、ニュートラルに保持していただけで回復していたので、同じように回復するものと思って、ニュートラルに持って居ました。

その後、回転が止まったかな?と思った辺りで(この時点でダイブ角はさらに深くなってました)軽くダッチロールするかの様な動きを一瞬した後さらにダイブする角度が深くなり、これは直らないと判断レスキューを使用する事を決断して(此処まで事態が始まってから一秒前後)、レスキューパラを取り出して投げようとした丁度その時に、機体が背面状態にタッキングしてダイブが止まったようです。

このダイブしている間、ずっと自由落下状態に近い状態でスイングラインにはテンションはあまりかかっていなかった可能性があり、特にスパイラル状態の間はいくらかは遠心力が掛かっていたかもしれないけど、その後は殆ど垂直に近い降下で、テンションが掛かっていなかったと思われます。

それで運悪くレスキューパラのコンテナはひっくり返った主翼の上に載ってしまい、急いでブライダルコードを手繰り寄せて開傘し直すように、努力したんですが間に合わず、そのまま山頂付近の林に墜落しました。

ひっくり返った後は、僕はレスキューを開傘しなおす事に努力を集中していたので、ひっくり返った後そのまま背面のままフラットスピン状態だと思っていたのですが、テイクオフで見ていた人によるとふらふらとはしていたが、滑空していたとの事。

おそらく、主翼はひっくり返って捻り上げになってしまっていましたが、V尾翼の取り付け角が+なのでひっくり返った場合、主翼に対して俯角がつく事になるので、たまたまピッチ安定のバランスが取れてしまっていたと考えられます。


3・事故原因とそのメカニズム

原因については、当初から翼端失速により始まる横転からのダイブと思って居ましたが、それ至るメカニズムについてこう言ったレポートを書くには理解が足りないと思い、専門家の意見を聞いたり相談してようやくレポートを書く事が出来ました。

大元の原因として考えられるのは、翼端失速なのですが、もう一つダイブからの回復についても非常に重要で、何故起きたのかメカニズムを理解する事が再発防止のみならず、もう一度同じような事態が起きてしまったとしても、最善の行動を取る指針になる筈です。

 

@ 翼端失速

普通、サーマルに入ろうとすると、弾かれますがこれは旋回内側の翼が、常に先に強い上昇風域に入るからです。

吹き上げられるから当たり前と言えばそれまでですが、もう少し理屈を考えると、飛行速度と上昇風速度との合成速度が作る仰角が常に内側の翼で大きくなるから外へ外へとバンクを戻される為「サーマルに弾かれる」と感じるのです。

仰角が大きいと、当然、揚力係数は大きくなりますから、旋回内側の翼は外側より先に失速に近づいてしまいます。

サーマルのエッジがはっきりしている場合には、この傾向が強くなります。

翼の平面形による失速傾向の違いは(後退翼・前進翼・テーパー翼・楕円翼等々)、確かに大きいものです。

が、テーパー比が0.4程度でも(例えば翼の中央部分の翼弦が2m翼端が0.8mぐらいの事)、あるいは後退角が20度程度あっても(ねじり下げが無い場合ですら)静かに左右対照に引き起こすなら、翼の上面の気流が剥離を始めるのは、翼端と翼根の中間、つまり片スパンの中央付近です。

従って極端にスパンが短い機体で無い限り、当て舵が迅速ならそうそう急にひっくり返ったりはしません。

所が、失速付近の低速で吊っている時、エッジの鋭いサーマルに片翼が入った場合、前述の理屈で、センタリング内側の翼は一気に仰角が増して失速を開始します。

直ぐに反対側へバンクすれば逃げられそうですが一瞬の事でそうは行きません。

プロセスはこうです。

最初は弾かれそうだったのが、内側翼の失速開始で今度は旋回内側にバンクが深まります。

バンク角速度が生じると進行速度との合成で更に更に、内側翼は仰角が増して深い失速に入って行きます。

バンクが深まるだけでなく、旋回内側翼が大仰角で失速する事により、抵抗も激増します。

一方外側翼は逆に跳ね上がる為、バンク角速度との合成で仰角は減少し、失速からは遠ざかります。

揚力係数が低下する為、形状抵抗・誘導抵抗共に減少します。

一見外側翼の揚力も減ってしまいそうですが、失速した内側翼で抵抗増大、外側翼で抵抗減少するのですから、機体は激しく旋回内側へヨーイングします。

まるで空中でグランドループしたようなものですから、外側翼の速度は急激に増して、より大きな揚力が発生し、更にバンクを深める事になります。

以上の事が、瞬時に起きますから、「スプリットSに入るような」という感じになります。

Aスピンダイブ

翼端失速に入った場合、次のプロセスとしてスピンダイブに機体は入り垂直に近い螺旋降下に入ります。

この段階では、殆ど垂直に近い感じでダイブを続けていますが、普通にダイブしたりした場合と違って自分ではバープレッシャーも無く殆ど操縦できません。

これは翼端失速により陥った状態で、同じようにフラットスピン(厳密にはスピンと言うそうです。)からの回復のプロセスにおいても同じように、スピンダイブに入ります。

このスピンダイブにおいては、機体姿勢角より降下角が常に深い為、継続的に深い失速状態(ディープストール)です。

バープレッシャーが無いのもその証拠です。

物凄い降下角なのに、失速している、という嫌な状態ですね。

ともかく、出来るだけ早く降下角に機体の姿勢を合わさねばなりませんが、時間との勝負で勇気が要ります。

所で厄介な事にハングの様に重心移動式のピッチ操縦はダイブ角が深くなると、体重が有効に利用出来ずうまく操縦できなくなってきます。

舵なら効くか?と言えばやはり失速中は効きませんが、水平尾翼があれば明らかに回復は早くなります。

この事から、ATOSのV尾翼はスピンダイブのからの回復に、幾ばくかの効果を発揮していると思われます。

しかし、どうして回復しなかったのかと言う点について、板垣さんに聞いてみた所事故状況で上げた、回転が止まりかけてダッチロール?って言う点を注目して、スイングラインのテンションが掛かっていない点が、原因の一つではないかとの事でした。

今の固定翼に限らず、高性能のクラス1のハングでも言える事だそうですが、機体の安定性についてスイングラインのテンションが掛かっている状態で殆どのテストが行われているし、機体の設計についてもそうなので、テンションが掛かっていない状態の場合、安定性が確保できない可能性があるとの事です。

今回の事故の場合、非常に深いダイブ角の為殆ど自由落下状態で、テンションが掛かりにくかった事で、それと以前同じようなスピンダイブに入った時にニュートラルでそのまま回復した為、ニュートラルで大丈夫であろうと間違った認識の為に前転してひっくり返ってしまったと考えています。

おそらく以前入って回復した時は、スピンからの回復で降下角が45度程度と今回ほどは深くなかった為何もしなくてもテンションが維持された為回復したと思っています。

 

以上原因が分かれば、おのずと解決策も出る筈ですが、翼端失速については開発者に問い合わせてくれるとの事です。

とりあえず分かっている事は、30度前後のバンク角で翼端失速に入った場合、今回と同じような事が起こる可能性が高いので、センタリング等なるべく沈下率を減らしたい場合は、なるべく浅いバンク角で旋回を行う事が考えられます。

これは、経験上浅いバンク角の場合、翼端失速が起きてしまった場合スピンに入ろうとする傾向が強く、スピンの場合は対処がより容易である事と、V尾翼を装備している場合はより安全になります。

また、深いバンク角でセンタリングしたい場合は、30度前後を避けもっとより深い角度を心がける事で、必然的に高速で飛ぶことになり安全性が高まります。

また、ダイブに入った場合は、常にベースバーを身体に引き付けスイングラインのテンションを維持する事を心がけ、ベースバーのバープレッシャーが回復するまでは、思いっきり引き込む必要があります。

バープレッシャーが回復すれば、翼が失速から回復した証拠なので、そこからダイブから回復します。

このレポートを書く上でオリンポス代表の四戸さんとロケットモンスター代表の板垣さんとJHFの朝日さんからは大変お世話になりました。

此処でお礼を申し上げます。

以上アクシデントレポートでした。

 

所で、まだまだ色々もっと詳しく知りたい方はこちらでオリンポス代表の四戸さんとのメールのやりとりを全文UPします。

それと朝日さんからCIVL(DHV)からのレポートを送って頂きました。